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仕事の対価

DATE:2018.09.27|AUTHOR:Mr.Tsuge その他

音楽にまつわる仕事はたくさんあるけど、レッスン(教える)、演奏(弾く、歌う)、作曲(作る)以外にも、採譜(聴く書く)も専門職の一つ。

文字起こしという職業がありますが、それの音楽版。

私の周りにはレッスン生のために(希望曲の楽譜が手元に無い場合に)無償で採譜してプレゼントしている神様のような講師が多くいる。

でも、正直いうと無償で奉仕する行為に疑問を感じている。

果たしてそれは世のため人のため自分のためになるのか?(趣味、ボランティア活動は除く)

確かに生徒にとってはありがたい事だけど、毎回、全員に対して希望曲を無償で採譜することは出来ないし遅かれ早かれしんどくなる。

専門学校や音楽大学では、音感トレーニングと記譜力を養う目的で課題として与えた方が学生のためになる。

 

別に事あるごとにお金を請求して金の亡者になれ、という抽象度の低い視点での話では無い。

プロフェッショナルとして、限りある時間と培った能力を使い顧客のニーズに応えたのなら仕事の対価は受取るべきでは?という話。

サービス(商品)の対価としてお金を受け取ることは全然悪いことじゃ無い。

報酬=サービスの質×量。

お金=お客様からの感謝の気持ち。

だから、良いサービスしてたくさん感謝されるようになれば講師も生徒も嬉しい。

音楽で生計立てたい(立てている)なら尚更のこと、お金を受け取ることで仕事に対するモチベーションが上がり、責任感が身につく。

細部にわたるクオリティの高さとスピードを自然と追求するようになる。

 

市販の楽譜代って1曲あたり100〜500円くらい。

楽譜集、バンドスコアだと一冊2000円〜3000円くらい。

ただ、それは数百〜数千冊(数万冊?)が印刷されて、全国の販売店に流通されているから1冊が上記金額で購入できる。

ダウンロード(デジタルデータ)販売では、印刷コストも在庫リスクもゼロだし半永久的に複製することができるから1曲数百円で購入できる。

オーダーメイドで一人のために作る楽譜と量産する楽譜ではお金の流れが異なるから、オーダーメイドの方が高額にならざるを得ない。

 

実際、市販されていない楽曲の採譜依頼をいただくことがチョイチョイある。

「この曲のタブ譜(ギター、ベース、ウクレレ用楽譜)を作ってください。市販されているオリジナルバージョンでは無く、You Tubeにアップロードされているライブバージョンの方で。動画のキーは高いから歌い易いようにもう少し下げてください。弾き歌いするからなるべくカポを使って楽に押さえられるコードでアレンジしてください。でも動画の演奏は自分には難しいから簡単に弾けるようにアレンジしてください。コードネームとコード表も載せてください。あと歌詞も記載してください」

「この曲のサックスソロをギターで弾きたいから楽譜作ってください。僕、楽譜は読めないから全てタブ譜表記でお願いします」

「この曲のコーラス用の楽譜を作ってください。コーラスパートはそちらで作って下さい。レッスンもお願いします」

 

こんな感じでご相談をいただきますw(本当にありがたい事です)

もう、採譜(鳴っている音を聴き取り楽譜にする)の域を軽々と超越して想像と創造のZOZOタウンレベル。

めちゃくちゃ脳が疲れるから甘いものが食べたくなる。

音楽ジャンル、採譜するパート、楽曲の長さ、演奏の難易度、音源の明瞭度で作業時間と労力が楽曲により全く違う。

転んで怪我したところに赤チンぬるのとバチスタ手術くらいに違う。知らんけど。

メロディラインを拾うのと、コード解析するのは違う作業だし、タブ譜表記の場合は押さえる弦とフレットがフィンガリングしやすいか熟考する必要がある。

文字の大きさ、配置、反復記号の有無によってページ数が変わり、読みやすさ(楽譜の使いやすさ)に影響するためデザインに気を使う。

だから、オーダーメイドの採譜代金って一律化が難しい。

ジャズピアニスト上原ひろみさんの楽曲を耳コピしろなんて言われたら白眼むいて泡吹いて倒れます。

しかし、知人は実際に採譜したそうです。しかも無償で(ブクブクバターン!!)

 

世の中に無いものを、目に見えない音を、専門知識と技術を総動員させて依頼者に最適化した物を作り出す妙技。

そして、その特殊能力を習得するまでに費やした膨大な時間。

真夏のエアコン無い部屋で、カセットテープがベロンベロンになるまで全裸で耳コピしまくっていた10代。

全ては女子にモテたい一心に他ならず。

 

誰もが等しく1日24時間×365日という制限を与えられている限り、時間の使い方によってその後の人生が決まるわけ。

それに近い将来、AI導入により高精度で自動採譜が可能になれば今回の「仕事の対価」についての問題提起は解決できる。

先生たちがレッスン時間外にわざわざ採譜した楽譜って、レッスンのおまけ程度の価値では無いよ。

 

by Mr.Tsuge

 

※著作権および著作権料についてはここでは言及していません